山下淵の大なまず その3

先日のブログ「山下淵の大なまず」の続きで
今回で完結となります。

 【山下淵の大なまず その3】

 さて、女性が姿を消したその翌日のこと。

 山下淵に、見た事もないような
 大なまずの死がいが浮かびました。

 その話は町中に広がり、たちまち殿さまの耳にも届きました。
 じつはその時代、山下淵では
 魚を獲ることは固く禁じられていたのです。

 家来が調べて見ると、大なまずの心臓に
 一本の鋭いモリが突き刺さっています。

 見るとそのモリには、
 はっきりと『中村大蔵』という銘(めい)が刻まれていたのです。

 「中村大蔵を、ひったてい!」
 ただちに大蔵は縄をかけられて、お城の庭に引き出されました。

 「なまずを殺したのは、自分でありません」
 大蔵は言いましたが、
 「では、誰が殺したというのだ?」
 「それは・・・」
 主との約束を破る事は出来ないので、仕方なく黙っていました。
 「黙っておる所を見ると、やはりお前の仕業だな!
 魚を取ってはならぬとの禁を破った上、罪を認めぬとは!
 さっそく、処罰を与えてくれるわ!」

 殿さまはかんかんに怒ってしまいましたが、家来の一人が、
 「殿、お待ち下さい。
 モリを作ったのは、確かに大蔵でしょう。
 しかし自分の仕業であれば、
 わざわざそれを分かるような名を刻む事はいたしますまい」

 と、取りなしてくれたので、なんとか太蔵は罪を逃れる事が出来ました。

 このことがあってから、大蔵は城下から遠く離れた
 深海(ふかみ)の里に移り住み、そこで多くの名刀を残したそうです。

 そして山下淵の主は大蔵との約束を忘れていなかったのか
 あれ以来、
 山下淵でおぼれ死ぬ者は一人としていなかったということです。

 

 おしまい  

 

山下淵の大なまず(諫早・公園橋)









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